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毎日の習慣

暮らしの中での経験が赤ちゃんの感覚を刺激して発達させます。それは親にとっても、赤ちゃんが学び、考え、成長する能力を育む良い機会です。バスタイムやマッサージなどのシンプルな日々の習慣は、赤ちゃんが感じて、見て、聞いて、におうことを通して複数の感覚に訴えかけることのできる理想的な時間です。

バスタイムの習慣により、肌と肌がふれあう機会が生まれます。赤ちゃんが感じているものは・・・

触覚は赤ちゃんが生まれた時に最も発達している感覚のひとつです。*a-8WHO(世界保健機構)は生まれてすぐからのスキンシップを推奨しています。*a-1スキンシップ(触覚刺激)は赤ちゃんの発達のさまざまな面において良い影響を及ぼします。バスタイム中のスキンシップやマッサージにより、赤ちゃんと親の両方のコレチゾール値が減少することが、バイオマーカーを用いたコレチゾールレベルの結果で明らかになりました。*a-4, 9 迷走神経の活動促進りにより食物の消化が良くなることから、早産児の順調な体重の増加が見られました。*a-10 また産後の母親のうつ症状および不安度スコアが改善されました。*a-11

産後うつを経験した母親にとって、うつ症状と不安症状は特に不安を感じる問題です。新生児中度ケア室から退院間際の早産児児の母親(サンプル数n=40)が、無作為に2つのグループに分けられました:第一のグループは赤ちゃんにマッサージによる触覚刺激を自分の手で与え、第二のグループは赤ちゃんがマッサージよる触覚刺激を第三者から与えられるのを観察していました。乳児をベッドに寝かせたまま、1回につき4分間の標準的なたマッサージが2セッション、合計8分の間行われました。セッション後、両グループの母親に抑うつ症状を表すスコアの低下が見られましたが、マッサージを実際に行って刺激を与えた早産児の母親グループは、不安症状を表すスコアにも低下が見られました。*a-11

早産児にもまたストレスは一般的に見られます。ストレスはグルコース代謝の異常調節の要因となり体重増加と健全な成長の妨げとなります。*a-12 マッサージによるスキンシップ(触覚刺激)後は、ストレスの低減に加え、迷走神経と胃運動性の活性化により体重が増加。*a-10 迷走神経の活性化は自立神経系の調整に重要な役割を果たします。迷走神経活性と自立神経系の調整は赤ちゃんの健やかな成長と発達に欠かせません。特に早産児の赤ちゃんの場合は必須です。新生児集中ケア室に入院中の、医学的に安定している早産児(サンプル数n=80)を無作為に2つのグループに分け、第1のグループはマッサージによるスキンシップを受け、第2のグループは標準的なケアを受け、それぞれ迷走神経活性と自律神経調整への反応を評価されました。5日間にわたる研究の間、マッサージによるスキンシップを受けた乳児は、継続的な迷走神経活性と自立神経調整の短期間の活性化に加え、体重の増加が認められました。*a-10

親の手で赤ちゃんに優しくふれることで、バスタイムは親と子のスキンシップをはぐくむ理想的でシンプルな習慣となります。

バスタイムは視覚を刺激する機会でもあります。赤ちゃんが見ているものは・・・

アイコンタクトは親子を繋ぐ強いきずなを生み出します。*a-13

バスタイムは、親にとって赤ちゃんの目を見つめてアイコンタクトをとる機会でもあります。赤ちゃんが生まれてから3歳になるまでに視覚が発達していく中で、視覚への刺激は必要不可欠です。*a-14 赤ちゃんは生まれたその瞬間から、自分を見つめる眼から受ける視覚的刺激を好みます。赤ちゃんはコミュニケーションの一環としてアイコンタクトをとりますが、親に見つめられてアイコンタクトを取った場合は神経処理機能が高まることが分かっています。*a-13

毎日の習慣 - Image 1 - Johnson's Baby - ja-JP

生後2~5日の幼児(サンプル数n=17)は、目をそらした場合と比べて、真っ直ぐに見つめた場合により長く見つめ返すことが分かりました。また4か月の乳児(サンプル数n=20)は、真っ直ぐ見つめた場合、より神経処理機能が高まることが脳電位によって分かりました。*a-13 この研究は赤ちゃんが非常に早い時期からアイコンタクトに敏感に反応することを明らかにし、それが後に社会性が発達する上での基礎となることを示しています。赤ちゃんはアイコンタクトによってコミュニケーションの取り方を素早く学び、また周囲にいる人間の行動を観察することにより意味のある笑顔を作り、重要な表現方法を学びます。*a-13 WHO(世界保健機関)は、赤ちゃんの健やかな成長のために生後直後からアイコンタクトをとるよう、全ての親に推奨しています。*a-1

バスタイムは聴覚を刺激する機会でもあります。赤ちゃんが聞いているものは・・・

コミュニケーションと情緒の発達に重要なもう一つの感覚は聞くことです。(聴覚刺激)聴覚があるおかげで、私たちは音を通して周囲の世界を体験します。バスタイムは、水の跳ねる音や赤ちゃんに話しかける声、そして歌声を通して聴覚を刺激する理想的な時間です。

音は脳の皮質にある聴覚や言語を司る分野に記憶を生み出すだけではなく、赤ちゃんの大脳辺縁系に神経接続を生み出します。*a-15赤ちゃんは後部左側頭領域での活動の高まりによって親の声を認識します。*a-16 このエリアは言語の処理が行わる場所であり、コミュニケーションと言語の発達という役割を担っています。*a-16さらに早産児の赤ちゃんが優しい声で話しかけられたり、子守歌などの歌を聞くと心拍数が安定し、親子のきずながいっそう深まります。また早産児の世話に伴う親のストレスレベルも低下します。*a-17

無作為に選ばれた、妊娠期間32週で生まれた呼吸窮迫症候群と臨床的敗血症のSGA(在胎週数による低身長)または非SGAの早産児(サンプル数n=272)を対象にした臨床マルチサイト試験において、心地よい声の歌を聞いた場合、心拍機能が時間の経過とともに向上することが分かりました。聴覚刺激を受けている間、早産児の心拍数は減少し、よりリズミカルになりました。さらに聴覚刺激は親のストレスも軽減し、親子のきずなをより強くします。*a-17

バスタイムは嗅覚を刺激する機会でもあります。赤ちゃんがにおっているものは・・・

香りは直接脳に作用するという点で、嗅覚はとてもユニークです。赤ちゃんの匂いの感覚を刺激すること(嗅覚刺激)は、情緒、社会性、記憶などを含む健やかな発達に多くの利点をもたらします。*a-3,18 また嗅覚刺激に触覚刺激が組み合わされた時、学習能力に大きなメリットを与えます。*a-3バスタイムの間に心地よい香りを感じることは、赤ちゃんと親の両方にリラックス効果を与えることが分かっています。*a-9

慣れ親しんだ匂いによってリラックスすることで、生まれて間もない赤ちゃんでも匂いを記憶する能力があるということが分かっています。赤ちゃんが痛みやストレスを感じている場合に慣れ親しんだ匂いをかぐと落ち着くことがあり*a-19、また泣いている赤ちゃんを落ち着かせる効果があります。*a-20正産期に生まれ母乳で育てられた健康な赤ちゃん(サンプル数n=42)が無作為に4つのグループに分けられました。第1のグループは母乳の匂い、第2グループはバニラの匂い、第3グループは馴染みのない匂いにそれぞれ慣れ親しませ、第4グループは何も匂いをかがせず比較しました。馴染みのない匂いをかいだグループや何も匂いをかがなかったグループと比べ、母乳またはバニラの匂いをかいだ赤ちゃんは、かかとからの採血後、泣く時間に著しい減少が見られました。痛みからのより素早い回復は、赤ちゃんには香りを覚える能力があり、慣れ親しんだ匂いをかぐと心の動揺を抑える効果があると考えられます。*a-19また親が、優しい香りをともなうお風呂に赤ちゃんを入れた場合も全体的に落ち着きが見られました。*a-9

嗅覚や触覚といった複数の感覚に対する刺激が組み合わさると、赤ちゃんの認知的反応が良くなります。生後1日目の赤ちゃん (サンプル数n=66)を対象に嗅覚の条件付けと学習に関する研究が行われ、その結果、タッチと匂いを同時に受けたグループは、匂いのみ、タッチのみのグループと比較して、親しみのある匂いに対してより反応することが分かりました。匂いをかがせると同時にタッチするグループ、タッチに続いて匂いをかがせるグループ、匂いのみ、タッチのみという4つのグループに赤ちゃんが分けられました。最初に匂いをかがせ始めてから1日目、タッチと匂いを同時に受けたグループのみが匂いに反応を見せ、それが学習によって獲得された反応であることが立証されました。

これらの結果は、赤ちゃんが生後48時間後から複合的な嗅覚に伴う学習を行うことが可能であり、また複数の感覚に訴えかける刺激は、1つの感覚のみを対象とする場合と比較して、より強力に作用すると示唆しています。*a-3 バスタイムは嗅覚とタッチを同時に刺激できる良い機会です。香りのあるバス製品を使った場合、香りが無い製品を使った場合と比べてスキンシップが増えることで、赤ちゃんにより多くの触覚刺激を与え*a-9、複数の感覚に対する経験を高めます。

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